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だいすき!!

もうとっくに終わってしまいましたが、表題のドラマを観ていました。軽度の知的障害者の母が子育てをする話です。原作は愛本みずほ作の同名漫画。詳しくは番組サイトか Web 検索でもしてもらうのが良いかと思います。
題材が題材だけにデリケートな問題も多く、さぞ映像化は難しかっただろうと思います。こういうテーマを取り上げると「こんなの一例に過ぎない」だの「現実はこんなに甘くない」だのといった意見は必ず出るはずで、制作側もリスクが高い題材を取り上げたものです。原作を含めあくまでフィクションですから 100% 現実世界と同じでは無いのは当然だと思いますが、個人的には極端な嘘っぽさを感じることはありませんでした。そもそも取り上げる障害の状態だとか程度だとか環境だとかシチュエーションといったことは、この物語の本質では無いような気がします。

重い題材のようなイメージがあるものの、実際の中身は主人公 (=柚子) が持てる能力の中で前向きに生きる姿が描かれているのが好印象でした。可哀相な人といった描き方では無く、一人の幸せを追求する人という描き方です。決してお涙頂戴的な表現ではありません。一方で柚子に対する周囲の反応や対応の描き方は残酷な面も描かれており、個人的にはあまり観たくないシーンもあったことは事実。比較の対象にすること自体無理がありますが、生まれつき若干の機能不具合を持つ fujaata も程度の差はあれ同じような場面に遭遇してきた (多分これからもする) 経験があるからです。外見からわかる不具合は攻撃の対象になりやすく、本人にはどうしようもない状況に追い込まれることもあります。また、不具合が無ければ簡単にできることでも自分にはできないこともあり、ドラマの中でも再三表現されていましたが、出来ないことを認めることから物事が始まるという現実があります。

fujaata の場合は単なる機能不具合ですから何ら生活に困ることもありませんし、無い物ねだりをしなければ健常者として普通に生きていくことができるのですが、それでも一例を挙げれば初対面の人との接触はどうにもイメージが悪くなるのは否めません。よくゼロからのスタートと言いますが、この点については fujaata の場合マイナスからのスタートです。普通の人が相手に対してどう「好印象」に持って行くかを考えるのに対し、どう「ゼロ」に持って行くかを考えることから始まります。出来ないことを認めることの一つですね。それゆえ脳天気に見えるかも知れない fujaata も、それなりに初対面の人との接触は若干余計な緊張が走ります。そんな風には見えないように振る舞ってはいますが。最近でこそ「全く気にならない」と言ってくれる方は増えてきましたが、それでも自分の姿が自覚できるだけに自分の中である線を引いてしまうのは避けようがありません。
一方でそれでも健常者として生きていることに違いはなく、というかそれが自分にとって自然な感覚だし、そうである以上あらゆる場面で健常者として対等に振る舞うことを当然と考えている自分がいます。不具合を持った当事者としての自分では無く、不具合を持った人の家族のような立場でしょうか。あ、別に fujaata はそのことで特に思い悩んでいることは無くて、日々それなりに楽しく生きてますよ。えげつない仕事もこなしながら。

ドラマの中でも柚子が同様に自分の障害による壁に直面する場面の心情が描かれています。それと同時に家族やサポートをする周囲の人達の心情も描かれています。この家族やサポーターの心情もまた fujaata の中に同居する気持ちと同じものがあります。いや、柚子やその家族と自分の心情を一緒にするのはあまりにも違いすぎることは百も承知なのですが、どうにも共感してしまい泣けてしょうがないんですよね。大残業大会で深夜に帰るクセに毎週観ずにいられず、録画した Video を観つつ号泣しながら寝るのが放送期間中習慣になってしまいました。ついでに録画した Video を編集しつつ号泣、編集した Video を DVD に焼きながら号泣...こうやって書くと変な人だな。

その中でも印象に残った場面は、第 7 話で夏梅 (柚子の弟である連の恋人)、柚子、琴音 (柚子の義理の妹) に繰り返し語らせている「何かを変えるためには動かなくてはいけません」というセリフ。人それぞれに持っている立場や能力による現在の状況は、自分で変えようと動かない限りどうにもならないことを伝えようとしている場面です。障害がある人だろうが健常者であろうが、それぞれ状況に違いはあれど同じことが言えるはず。自分のことがわかっているだけに踏み出せない一歩というものがあって、それを踏み出さないことには何も変わらない。でも踏み出せない。踏み出せない理由は簡単で、踏み出すことで少なからず傷を負うことがわかっているからですね。このあたりは個人的には結構痛い部分だったりします。もちろん、そんなことを考えなくても充分現状に満足できる人も世の中にはたくさんいるとは思いますし、それに越したことはありません。

と、余計な話を書いてしまいましたが、物語自体は限られた放送回数の中で多少の詰め込み感や設定の強引さはあったものの、良い内容だったなと思います。柚子役の香里奈が連続ドラマ初主演で、役のために髪をバッサリ切っての出演だったことは結構話題になったようですが、演技そのものも素晴らしかったと思います。こういう役はある意味演じる側も辛いものがあるかと思います。違和感無く完璧に障害のある人を真似るわけですから。普通だったら目をそらしたくなるような姿も演じなくてはいけないわけで、恐らく心苦しさもあるはずです。それに綺麗なモデルさん感覚ではあり得ない姿をさらすことになります。全編通して「ここまでやる?!」というシーンもいくつかありました。以前「CA とお呼びっ!」に出演していたのを観たときも、モデルにしちゃかなり上手いなと思っていたのですが、今回改めて演技力の高さを認識しました。余談ながらショート・カットで劇中はほぼノー・メイクだった香里奈ですが、見た目もこれまでのイメージより個人的にはよっぽど良かった。こんな可愛かったっけ?! って正直思いました。

難しい題材だけに他の出演者も実力者が集められていたように思います。特に柚子の母親役が岸本加世子というのは、外せない印象がありました。子役を含め脇役の役者さんのレベルが高かったことが、完成度の高さに繋がっていたように思います。個人的に物語の構成上ポイントだったと思うのが、原作には登場しない (らしい) 琴音という登場人物。設定は柚子の子供ひまわりの父親の妹、つまり柚子の義理の妹です。存在や柚子との関係に多少の無理はありましたが、障害を持つ人と無縁の一般の健常者という視点から、話を追う毎に障害を持つ人と密接に関わる関係という視点に軸足を移す役割です。一般にはあまり想像し得ない環境の話ゆえに、限られたドラマの放送時間で物語を視聴者が理解する手助けをするために必要な役割を担っていたと思います。なかなか微妙な役所でしたが、演じていた福田沙紀が上手く表現していました。演技の技術云々というより、設定された人物像の心情がよく出ていたのが好印象でした。fujaata が観たドラマではいずれもスペシャルもので「星ひとつの夜」「一瞬の風になれ」で福田沙紀を観ましたが、可愛い女子高生役よりちょっと訳ありで陰がある役を表現するのが上手いタイプに思えます。

fujaata の観点からはもう一つポイントがありました。柚子の弟の連はピアノの才能があり、大学でピアノを学んだものの柚子を抱える家庭の事情からピアニストの道を (一旦) 諦め、サラリーマンとして生きていく設定なのですが、その連が精神的に取り乱した柚子を自分の弾くピアノで落ち着かせるというシーンがあります。fujaata も趣味で演奏者側になることがありますが、上手下手ではなく、自分の演奏でその場にいる人の気持ちを動かせるというのは素晴らしいことだと思います。もちろん音楽をやっていく上で技術的な面の追求は欠かせないのですが、聴いてくれる人の気持ちを動かすというのはもっと大切で、演奏する立場にある人ならばそういう面を意識することは大事なことだと思います。自分が演奏する楽器や棒で作る音楽で、その場にいる人達に何かを伝えることが一表現者としてあるべき姿の一つかなと。プロであれアマチュアであれ、人前で音楽を奏でるという活動にとって共通のテーマではないでしょうか。

まだ幼い子供や障害で言葉が上手く話せない方の前で演奏するというのは、かなり恐いことでもあります。健常者の大人なら言葉で感想を表現することができますし、あまり面白くなくても「良かった」と言うことができます。しかし前述の彼らの反応はストレート。そこにお世辞だの体裁だのはありません。伝わったのかそうでなかったのかは目の前の姿を見ていれば露骨にわかります。どんなにリズムや音程が揃っていても、超絶技巧テクをかましても、目の前の子供が踊ったり悲しんでくれなかったら、それは多分表現としては成立していないのだろうと思います。上手く伝えられた時の本番は、演奏した側も達成感がありますね。後で録音を聴くと「なんじゃこりゃ」という場合も多々ありますが、少なくとも演奏したその場には人の気持ちを揺さぶる何かが存在したことは間違いないでしょう。それで尚かつ録音を聴いても「聴ける」演奏でもあるべきなんですが...。(^^ゞ

音楽といえばテーマ曲の「遥花」も好きですね。melody. の曲は結構好きで何枚か CD を持っていたりするのですが、あのサビへの展開はよくあるパターンながら個人的にかなりツボです。どなたか今度カラオケか何かで fujaata に歌って頂けると嬉しい。
それから原作タイトルでもある「だいすき!!」のネーミングも良いなぁと思いました。暗さや辛さを感じさせず、とても明るくて前向きな感じがします。自分のこととして捉えたときに「だいすき!!」な人がたくさんいるのは幸せなことだと思います。

6 月 4 日には DVD が発売されるそうなので、見逃した方は是非一度観て頂くことをお薦めします。特に小さいお子さんがいる方や、これからお父さんお母さんになる方には、いろいろ考えさせられる部分も多いかと思いますので。

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